今年ほど五山の送り火が注目を浴びたのは、近年なかったと思う。京都に住む私にとって、いろいろ考えることはあるが、そこは触れずにおく。
でも、五山の送り火とはどんなものであるのか、京都の人々が、保存会の皆さんがどのように受け止め受け継ぎ火を灯し続けたか、そういうことを考えるのによい機会ではあると思った。

古い本である。図書館で偶然手にしたその本は、だいぶ傷んでいた。
しかし、中身は色あせていない。
何百年もの昔から送り火が受け継がれたように、この本も30年経った今でも「生きて」いる。

コンパクトな本ながら、送り火の歴史や、その当日に何が行われているか、がよくわかる。
もちろん、今では違うかもしれないのだが、そんなに変わらないのではないかとも思う。何となくだけれど、そう感じた。
「その日、午後」「点火まで」「燃える送り火」とされた各章では、昭和50年の送り火の様子が時間順に書かれていて、興味深い。写真も多く掲載されている。
下から見上げるあの火の裏では、そんなことが行われているのか――と。

第二次世界大戦からの復興途上、平和をかみしめつつ途絶えていた送り火が復活。そしてその30年後に本書の出版。またその30年後の今年は、何の因果か東北東日本大震災という大災害が起きた。
悲しいことも多くあるが、たくさんの京の人が、たくさんのお精霊さんを送り、復興への祈りを込めて、夜空に浮かぶ五山をそれぞれ眺めたのではないだろうか。
そんなことを思った、2011年夏の終わりのことであった。

大文字―五山の送り火 (駸々堂ユニコンカラー双書)