はじめに

 ヒトの中には、ネコが好きな者が多くいます。ただ、そんなネコ好きなヒトの中に、実はネコであるヒト、かつてネコであったヒト、あるいはかなりネコ寄りのヒト、などが多く存在することは案外知られていません。今回ご紹介するのは、そういった広義の“ネコ”諸氏にお奨めしたい本の“ごく一部”です。そう、ごくごく一部。この世の中には信じられないほどの“ネコ本”が存在し、とある図書館の検索システムでタイトルに“猫”と入力してみたら2000件を超えてしまうほど所蔵されていとの噂です。ですからこれは、ホントは目録じゃないです。一介のネコ司書がたわむれに選んだ本の紹介だとご理解ください。
 ネコのみなさん、ネコのヒトのみなさん、そしてネコ好きのヒトのみなさんにも、ぜひ読んでいただきたい。

 まずは、
『ネコのために遺言を書くとすれば』(木村晋介)
『猫のための音楽』(相沢啓三)
などいかがでしょう。ネコのための本であることは間違いないです。ですが、実は私読んでいません。短期間にネコ本をいろいろ探していたら読むヒマがありませんでした。タイトルだけですみません。読んだらどんな本だったか教えてください。

『新猫種大図鑑』『イラストでみる猫学』『愛猫のための家庭の医学』『最新くわしい猫の病気大図典』
 これらの本は主にヒトがネコを知るために読む本です。“猫種”は“ビョウシュ”、“愛猫”は“アイビョウ”と読みます。ヒトにも『人種大図鑑』があればヒトと接するネコにとって有用であると思いますが。
 これらの本の中で、特に、医学関係の本は身近なヒトに読んでおいてほしいものですね。ヒトに飼われているネコは病気にかかると病院に連れていかれますが、ネコはかつて病気になってもほっといて治していました。それでよかったのです。しかし、最近のネコは大変な病気にかかることがわかっています。

『猫のエイズ FIV感染を巡って(石田卓夫)
 これを読んだのは何年前だったでしょう。怖かったのを覚えています。ネコ界にはネコのエイズを治せる医者がいませんので、ヒトの医者に診てもらうしかありません。それでも治る病ではありませんので、罹らないようにするしかない(性交渉で感染はしないそうです)。ネコと、ネコに接するヒトに読んでおいてほしいです。

『世界のネコの世界 にゃおよろずのくにぐに(千石正一)

 これは“Necological Essay”だそうです。世界のいろんな地域・社会の文化・風習などを“Necology(猫学)”の視点から書かれています。自身のことを“半猫人(はんびょうにん)”であるという著者は、冒頭で「ネコの立場には立ちきれていない」ことを「ネコたちには申し訳なく思う」とし、けれど「読者諸兄の大半はネコではないと思われる」と述べておられます。
 ネコ側から読んでもおもしろい、ためになる一冊でした。世界にはいろんな文化があるものです。ドイツって20数年ぐらい前までネコ食が認められてたらしいよ。

 さて、そうやって世界のネコの世界を知って旅へ出たくなったなら、雑誌『じゃらん』を参考にされるのをオススメします。旅ネコ・にゃらん氏が大いに関わっていることでも知られます。夏頃のにゃらん氏は大いに青春を謳歌していた感じの旅をされていましたが、最近一念発起して営業の仕事をされているようです。彼の生き方は我々ネコに参考になることでしょう。
URL:http://www.jalan.net/jalan/doc/nyalan/summer2007/index.html

『猫語練習帳』(伴田良輔)
 ネコがヒトと会話するためには、“ネコがヒト語を覚える方法”と、“ヒトがネコ語を習得する方法”とがあることは容易にご理解いただけると思います。本書は後者、ヒトがネコ語を覚えるために読むべき本です。簡単な会話を中心に書かれており、またネコの習性・習慣等も同時にかいま見られるようになっている、すぐれた本です。ぜひ、ネコのみなさんはこの本を購入し、飼い主等のご自身が会話したい相手に贈るとよいでしょう。
 NDC(Nippon Dicimal Clasification=日本十進分類法)では645.7(猫)に分類されますが、NyDC(Nyanco Decimal Clasification=にゃんこ十進分類法)ではもちろん800番台(言語)に分類されます。
 また、ネコ語関連本には『猫語の教科書』(ポール・ギャリコ)という本があります。こちらは、ネコが読むための本であって、ヒトに読ませてはいけない本のようです。前から気になってはいますが、まだ読んでいません。内容紹介によると“猫による猫のための「快適な生活を確保するために人間をどうしつけるか」というマニュアル”だそうです。これは、読まなきゃ。

『113びきのねこのてがみ』(文:ビル・アドラー、絵:ポール・ベイコン、訳:掛川恭子)
 ネコ専用のサンタクロースがいるらしく、そのサンタに宛てたネコたちの手紙です。私はクリスチャンじゃないからか、その存在を知りませんでした。ネコたちのサンタさんへのお手紙は、くすっと笑ってしまうものばかり。それでいて時々ちくり。
 スクリーンセーバーの魚をひっかいてしまったネコは、新しいパソコンがほしいそう。金魚鉢の金魚がいつの間にか減っていて寂しそうなので、金魚のために新しい金魚の友だちを、とか。「あたしの家にきたとき、あたしを起こしてください。/近所に住んでいるねこが、サンタクロースなんて、ほんとうはいないんだなんていうんです。よろしくおねがいします」なんて。ヒトの子もネコの子も同じなのかもしれませんね。

『ヒナ祭りに誘拐された子ネコちゃん Shizimi(広野まさる)
 シジミちゃんは広野家のポポさん・ピピさん夫妻のお子さんです。
 3月3日、ヒナ祭りの日に突然誘拐されたシジミちゃん。恐ろしい誘拐犯はなかなか解放しれくれない。どうやら番犬もいるようだ。ああ助けて、おとうさん、おかあさん、ご主人……。誘拐犯は、毎日シジミの大好きなお魚をたっぷりくれたりして、いったいどういう魂胆なのでしょう。ドキドキハラハラの展開です。
 なお、あとがきは広野ピピさん、すなわちシジミのおかあさんが書いています。絵本なので子どものヒトにも読みやすいでしょう。

 そしてどうしてだか、「シジミ」という名前のネコが2匹も本を出しているのです。そんなによくある名前なのでしょうか。私の周りに「シジミ」さんはいらっしゃらないのですが。
『ねこのシジミ』(和田誠)
 こちらのシジミさんも、ご自身で書かれているようです。みそっかすでもらい手のなかったシジミさんでしたが、ちゃんと飼い主さんにも恵まれました。ちょっとした事件もありますが、シジミさんがんばります。そして平和な日々が……。

 さて、子ども向けの本が続いたので大人向きの本に移りましょう。
 割に“文豪”と呼ばれるヒトの中に、ネコがいるそうです。私調べでは、宮沢賢治(『どんぐりと山猫』『猫の事務所』等)や萩原朔太郎(『猫町』『青猫』等)がそれに近いのではないかと思っています。そして、何と言っても夏目漱石。
『吾輩は猫である』(夏目漱石)
 「吾輩は猫である。名前はまだない」というくだりで始まるこの作品は、言わずと知れた大名作。
 ともすれば出だしの部分しか知らないというヒトも多いと聞くが、実はこの冒頭の文章は少しおかしいでしょう。「名前はまだない」とあるが、名前はどう考えても「夏目漱石」です。それしかないじゃないですか。表紙にもはっきりと書いてあります。ネコ文豪の夏目漱石が、ちょっと洒落を利かせて「名前はまだない」としただけです。それなのにヒトは、自分の都合のいいように解釈するので困ったモノです。「ネコの目を通して見た人間社会への風刺や皮肉のきいた作品」などともっともらしいことを言うのです。確かに、夏目漱石はネコ以外の作品が数多くあるので誤解を生んだとしても仕方のないことではありますが、彼がヒトのフリをして書いた作品群が他の多くの作品なのです。
 改めて言っておきましょう。夏目漱石はネコである

 そして、コレはいつか読みたいと思っていながらまだ読んでいない作品です。リリアン・J・ブラウンが描く、シャム猫・ココが活躍するミステリ作品シリーズ。タイトルを並べるだけでも壮観です。ということで、並べます。
『猫は手がかりを読む』(1966)『猫はソファをかじる』(1967)『猫はスイッチを入れる』(1968)『猫は殺しをかぎつける』(1986)『猫はブラームスを演奏する』(1987)『猫は郵便配達をする』(1987)『猫はシェイクスピアを知っている』(1988)『猫は糊をなめる』(1988)『猫は床下にもぐる』(1989)『猫は幽霊と話す』(1990)『猫はペントハウスに住む』(1990)『猫は鳥を見つめる』(1991)『猫は山をも動かす』(1992)『猫は留守番をする』(1992)『猫はクロゼットに隠れる』(1993)『猫は島へ渡る』(1994)『猫は汽笛を鳴らす』(1995)『猫はチーズをねだる』(1996)『猫は泥棒を追いかける』(1997)、『猫は鳥と歌う』(1998)、『猫は流れ星を見る』(1999)『猫はコインを貯める』(2000)『猫は火事場にかけつける』(2001)『猫は川辺で首をかしげる』(2002)『猫は銀幕にデビューする』(2003)『猫は七面鳥とおしゃべりする』(2004)『猫はバナナの皮をむく』(2004)『猫は爆弾を落とす』(2006)『猫はひげを自慢する』(2007)『The Cat Who Smelled Smoke』(2009、おそらく邦訳未)参考:http://www.aga-search.com/607koko.html
どうです。すごいでしょう(まぁ、すごいのはブラウン女史なんですが)。……書き並べたら、読みたくなりました。現時点で30作品、読めるだろうか。いや、読むぞ。

『きょうも猫日和 猫のいる歳時記』(文:加藤由子、絵:大高郁子)
 さて、2月22日はにゃんにゃんにゃんで「猫の日」です。一見、ネコはカレンダーと関係ない生活をしているようですが、ヒトと密接に関わって生きるネコたちには、毎日にいろんな記念日があり、いろんなエピソードがあります。何もない日もネコ雑学。昔あったとされる「猫が年をとる日」、11月11日「日本初のウィスキー工場が完成した日」にちなんだネコ話、十二支にネコ年のある国の話、6月10日「時の記念日」の時計代わりのネコの目の話……、紹介したい話はいろいろありすぎて困ります。その中で1日だけ。8月15日終戦記念日。「……なぜ人間は戦争をするのか。「知恵のあること」がヒトという動物の特徴だと思うが、なぜ戦争という手段でしか問題を解決できないのだろう。人類の知恵とはその程度のものなのか。……」ヒトが争っていると関係ないネコ(やその他の動物)まで巻き込んでしまいます。ヒトのヒト、特に偉いヒトのヒトはもっと考えて欲しいものです。

 冒頭でお伝えしたように、これらの本はホンの一部でしかありません。私自身、紹介した本を全部読み切れていません。自分がこれから読んでみたいという本も入っています。興味のある方は、これらの本を読んでいただくのはもちろん、拾いきれていないたくさんの“ネコ本”を教えていただけたら、嬉しいです。

(H22/2/22)※今回だけ和暦表示