京都でも1、2を争う大人気観光スポット…それが嵐山。風光明媚山紫水明の名をほしいままにするこの地は、古来より貴族の別荘地であったともいう。桜花咲き乱れる春、新緑輝く初夏、紅葉葉(もみぢば)で深紅に染まる秋、白雪かぶる静寂の冬――四季折々に美しい姿を見せる周辺は、常に観光客で賑わっている。特に、春と秋は、“賑わう”どころではなく“ごった返す”“身動き取れない”ほどである。
 そんな大人気の嵐山にあり、静かに、しかし最もその景観を堪能できる場所があるのである。京都の人にも案外知られていないので、非常に静かにのんびりと過ごせるスポットであり、正直あんまり知らせたくないくらいである。なので、あんまり行かないで。まぁ、そこに辿り着くまでにはそれなりの覚悟労力備えとが必要でもありますが。

 嵐山といえば「渡月橋」。その(実のところはただの)橋を、街側(北詰)から山側(南詰)へ渡ります。ごく自然の流れです。渡月橋を南方向に渡りきったそのむこうに、心ある人に見つけられる看板がある。書きなぐったような、「Great View」「絶景」といった筆文字。

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29-b  矢印に沿ってしばらく歩みを進めると、またも出てくる「Great View」。
 これは…何だろう……? 
 ここで、何も考えず眺める人、その看板の存在にすら気づかない人、ナニカの存在に興味を持ち進む人――に分かれる。もちろん、私は進みます。

「世の中には2種類の人間がいる。気づく人と、気づかない人だ」(きよこ)

 ドラクエの勇者の気分で(先に何があるかはわからないが表示を読んだらその通りに)進みます。私と同じような志(おおげさ)の人は、きっと賛同してパーティをくんでくれるでしょう。さて、道の向こうには何が待っているのか。勇者と仲間ではなく、飼い主とヒトっぽいネコが歩きます。

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 少しずつ勾配がきつくなります。片側が山、もういっぽうは川(崖)。モンスターは出ませんが、ところどころに「Great View」が出てきます。出てきたら倒す――わけではなく、シャッターを押して先へと進みます。
 
29-e  モンスターは出ませんが、敵はいます。「よわいこころ」です。挫けそうになります。なんせ山道ですから。1000m+200mの表示があります。高低差も200mあるってことです。まごうことなき試練です。
29-f ほかにも敵がいます。「かれいからくるあしこしのよわさ(加齢からくる足腰の弱さ)」です。しかし、もとは1体のスライムにも苦戦していた少年も、こういう試練を乗り越えて勇者になっていくんですよね。私もがんばります。
途中、美しい景色に心奪われたりしつつ、一歩ずつ、進みます。それしかないのです。
そうやって着いた先。もちろん、中ボスクラスの敵がいるはずです。

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「拝観料400円」

かいぬしはふたりぶん、ごうけい800Yをはらった。ちーん。

………。さて、ドラクエごっこは終わり。

 渡月橋から約2600歩(歩数計つけてました)、距離にして2.0kmauのRun and Walkを起動させてました)、30分ほど歩きまして着きましたのは大悲閣千光寺です。知る人ぞ知る古刹名刹。高瀬川などを開削した角倉了以(すみのくらりょうい)が工事関係者の菩提を弔うために創建したそうです。かの松尾芭蕉が「花の山二町のぼれば大悲閣」と詠み、句碑もあります。

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 角倉了以の像があるそうですが、先日お邪魔したときにはありませんでした。たぶん。以前に訪れた時は見た気がします。おそらく。お寺という雰囲気はあまりないのですが、一応、本来ご本尊のいらっしゃる風なところで手を合わせます。
 とにもかくにも大悲閣というのは、行けばわかりますが、気持よく遠くまで見渡せ、いい眺めです。客殿では、気のいいおっちゃん(ご住職ではない)が、説明をしてくれます。

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双岡方面

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秋が楽しみ

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トロッコ列車も

――小倉山、小倉山荘、百人一首。亀山、嵐山。双岡(ならびがおか)、仁和寺。はるか遠くの比叡山、大文字山……清水寺。
遠くに、近くに見える“京都”を案内してくださいます。その謂われや由来などもうまいこと説明してくださります。ゆっくりぼーっと眺めていると、時々トロッコ列車が眼下を走ります。汗をぬぐうように爽やかな風が吹きわたります。

29-o-tea 29-p-book  ここではお抹茶やお茶菓子も(有料で)いただけるようです。(私たちはいただいていませんが)
ノートが置いてあって、訪れた人たちが思い思いに書きつづっています。個人的には「金いるのか!」という書き込みがおもしろかったです。
先日(2010/1/25)亡くなられた、作家・北森鴻氏への追悼ノートもありました。大悲閣を舞台にした小説を書かれていたので、ファンの方たちが多く訪れているようでした。著作も置いてあります。

 

29-q-sisiodosi  お庭にはふだんはおどさない鹿威し(ししおどし)があります。
「鳴らさないのですか?」と聞いてみたところ、昼間はうるさいので鳴らないようにしているけれど、夜はしっかり機能しているとのこと。また、昼間のお客さんは少ない時は本当にわずかな数しか来ない(おっちゃん曰く「1日20人も来ればいい方」とのこと)そうですが、夜は毎夜千客万来。鹿、猿、貂(てん)、などなどでたいそうにぎわうそうです。

 それから、梵鐘があり、自由に撞けます。入山(拝観)には金が要りますが、鐘はfreeだって。

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時々妙な時刻に鐘の音が聞こえることがあるのですが、ひょっとするとここの鐘だったのかもしれません。実にfreedomです。

 初めて訪れたとき、気のいいおっちゃんは、帰り際に私たちの記念写真も撮ってくれました。
――もうすぐ紅葉(こうよう)するけどな、紅葉(もみじ)の時季はそりゃきれいやで。
――ん、そか。地元か。そんなら知ってるやろうけど、連休はずして来たらええわ。
そうやさしく教えてくださいました。
 結局、次にやって来たのは4月だったのですが、まぁ近所なので、強い意志さえあれば行けるはずです。その、強い意志というのが難しいのですが。往復で190Kcalぐらいは消費できますよ。

「大悲閣に行かずして、嵐山を語るなかれ」

とかなんとか言ってみたりして。いや、でも、一度のぼってみる価値はあると思いますよ。

※私の大悲閣への来訪は2009年10月12日と2010年4月10日の2回です。使用した写真はその2回のもので、まぜこぜになっています。写真が下手くそなのはいつものことなのでご容赦ください。実物はもっと美しいということで……。


【おまけ写真】
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割に早い段階の“途中の景色”、少し歩いた辺りの“途中の景色”、大悲閣のかわいい番犬“すみれ”くん。
名称:大悲閣千光寺
場所:京都市西京区嵐山中尾下町
拝観(入山)料:400円(お抹茶は茶菓子付きで500円)
アクセス:嵐電「嵐山」駅、JR山陰(嵯峨野)線「嵯峨嵐山」駅、阪急嵐山線「嵐山」駅のいずれかで下車。徒歩けっこうたくさん。渡月橋の南側から手書きの案内が出ているし、一本道なので、まぁ迷わないでしょう。
29-u-kutsu 服装:動きやすい服装が望ましい。歩きやすい靴で、荷物も少なめにしてリュックなど両手がフリーになるようなもの、タオルなんかも用意しておくとよろしおす。え、ヒールで登るの?やめとき。
おすすめポイント:嵐山の自然。目の前に広がる京都の景色。マイナーゆえの静けさと独り占め感。
効能?:運動不足解消、爽やかな気分、数学・理系上達(そろばんの寺として有名)
(2010/5/11)