ぶつぶつノート ~ごはんおかわり~

たとえアイコンがうさぎになろうとも、ヒト型ネコはゆずらないっ!
ごはんおかわり! お茶も!
あ、ぶぶ漬けでもどうですか?

昼まで用事のないのんびりした休日。朝7時ぐらいに目を覚ましたが、当然のように再び眠りについた。9時半ぐらいに起きればいいかぁ。晴れてるし洗濯もできるなぁ。さ、もうひと眠りしよう。

……ふと、目が覚めた。まだ寝てていいんじゃないかなぁ、何時だろう。時計を探す。あれ、時計がない、どこだろう。

……がばっ。あ、何だ、夢かぁ。夢の中で目が覚める夢かぁ。相変わらず変な夢を見るなぁ。で、何時だろう。時計はどこかな? あれ? 部屋の中の時計がおかしい。小さな目覚まし時計2つ、ビデオの時計、携帯電話の時計、掛け時計……、いくつもいくつもある時計が全て違う時刻を指している。え、何で何で?

……ここで目が覚める。何だ、また夢か。そろそろ起きて洗濯する時間かな? 時計を見る。時計の針は午後1時をとっくに過ぎている。え、嘘?

……嘘だった。また夢だ。今度こそ起きて時計を探す。が、また見あたらない。部屋の外に出れば時計ぐらいどこかにあるだろう。誰かに聞いてもいい。近くに人が集まっている。よし、あの中の誰かに時間を聞こう。そばに寄る。しかし、「こっちに来ないでくれ」と追い払われる。私は、今が何時なのか知りたいだけなのに。釈然としないものを感じながら自分の部屋に戻る。

……目が覚める。何だ、また夢か。確かにおかしいもんな。しかし、よく続く夢だよなぁ。面白い夢だし、誰かに話そう。忘れる前にメモを取ろう。えーっと、夢の中の夢、いったいいくつ見たんだっけ。ひぃ、ふぅ、みぃ、……。あ、そういや、今何時だろう。時計を探す。

……目が覚める。おかしい。いくらなんでも続きすぎだ。今度はちゃんと目が覚めているはずだ。今までのは夢だけど、今度は現実。しっかり目が覚めているはず。マンガみたいに頬をつねってみるか? 上体を起こす。自分の体を触ってみる。ぽんぽん。うん、確かに感触がある。起きている。

……しかし、そう現実は甘くない。いや、夢は甘くない。しっかりと起きたことを確認しても、そのことが夢だったのである。今は起きている。さっきも確認した。でも夢だった。夢だった、と考えているということは、夢を見ていたのが寝ている時で、今は目が覚めて起きているから考えられるんだ。そのはずだ。私は目を覚ましている。夢から覚めている。これは現実だ。

……という夢を見ていた。勘弁してくれ。私は目を覚ましたい。また夢だったなんて。やめてくれ。これも夢なのか? そうなのか? そうなんだな? いい加減、起きさせてくれ。

…………。

……がばっ。はぁ、はぁ。今度こそ、起きた。はぁー、怖かった。長い…長い夢だったなぁ。ぽんぽん…。両手で体を叩いてみる。夢の中でも確認したな。でも、今度は確実だ。たぶん。そうだ、時計。ほっ、全部同じ時刻、8時40分を指している。夢の中に出てきた、掛け時計は私の部屋にはない。寝る前と何ら変わらない自分の部屋だ。

よかった。夢じゃない。今度こそ、確かに現実だ。

あれからずっと夢を見続けているのでない限り――。

この作品はだいたいノンフィクションです。

(2003/11/1)

――それは、ひとめぼれだった。

私と「ぶたぶた」との出会いは約2年前。2001年秋頃だったか。私は友人と京都観光の途中でとある本屋に入った。そこで、2人で「ぶたぶた」に出会い、惚れ込み、家に連れ帰ったのだった。

ぶたぶたは、本名・山崎ぶたぶた。今までに数多くの職に就いてきたらしい。ある時はベビーシッター、ある時はシェフ、またある時はタクシードライバー、そしてまたある時は盗犯係の刑事。人当たりがよく、仕事もでき、周囲の人から尊敬されそして愛される、そんなおじさんのようだ。美しい奥さんとかわいい2人の子どもたちのよきお父さんでもあるらしい。そんな彼は、実はぶたのぬいぐるみ。ピンク色のバレーボールぐらいの大きさをした、黒いビーズの点目に少しそっくり返った右耳を持つ、かわいらしいぶたのぬいぐるみが山崎ぶたぶたの正体である。

でも、主役はぶたぶたではない、と私は思う。あくまで、ぶたぶたに出会った人たちのお話である。悩みがあったり、イライラしたり、笑ったり、怒ったり、泣いたり…。そんな普通の人たちがぶたぶたに出会ってしまうお話。初めてぶたぶたを――動いて喋るぶたのぬいぐるみを見て、驚いて、話して…そうして自分の何かが変わる。だから、読んでるこっちもぶたぶたに会ったような気持ちを味わえる。

小説だから冷静でいられるんだろうけど、現実にぶたぶたが目の前に現れたら、私はどうだろう。私は現実を直視できるだろうか。ありえないと思っているから楽しんで読んでるんだと思う。でも、もし実際に、私が入った喫茶店に、コーヒー飲んでるぶたぶたが隣の席にいたりしたら、私はどう反応するんだろう。想像つかないけど、かなり楽しい想像だ。

接点がなかったら、ぶたぶたの行きつけのお店に私も通う。がんばって通う。そしていつか「よく会いますね」みたいな感じで話しかけて、できたら友だちになりたい。あるいは、同僚。年はだいぶ違うと思うから、同じ職場に上司あるいは先輩としていてくれたらいいなぁ。たまには飲みに行ったりしてじっくり、お話したい。ぶたぶたが上司だったら「今日ちょっと飲みに行こうか」と言われて行くような気がする。

私はぶたぶたを、単にかわいいキャラクターとか、癒し系とか、そんな言葉で片付けたくない。ぶたぶたは人をよく見ていて、洞察力が鋭い。どんなにかわいらしく見えても私なんかよりはるかに人生経験が豊富である。苦労もしてるんだと思う。だから、ぶたぶたから出てくる言葉は本当に優しいんだと思う。こんな人(人じゃないけど)いたらいいなぁ、と思わせられる人(人じゃないけど)なのだ。

だから、会いたい。あぁ、ぶたぶたに会いたいなぁ。

(矢崎存美「ぶたぶた」2001年4月、「ぶたぶたの休日」2001年5月、「刑事ぶたぶた」2001年6月、全て徳間書店、徳間デュアル文庫)

ぶたぶた  ぶたぶたの休日  刑事ぶたぶた

(2003/10/29)

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